駆け引き





キーンコーンカーンコーン。

『おい、。ちょっとさっきの授業で聞きたいことあんだけど。』
『え、英語かぁ。教えられるかなぁ…。』
『なら分かるだろ。』
『いや、そんなプレッシャーいらないから。』
『これなんだけど。』
『(え?無視?)あぁ、これはbe good atのgoodが比較級になってるだけだよ。ほら、thanがあるでしょ。』
『なるほど、そうゆうことか。』
『そ、だからatが入るんだよ。』
『これだけどうしても分かんなかったんだよ。サンキュ。かなり助かった。』
『いえいえ、お役に立てたなら何より。』

『もう帰るのか?』
『んー、そだね。残る理由ないし。』
『なんか用事でもあんの?』
『別にないけど。どーしたの?』
『さ、これ提出した?』
『進路希望?一応ね。土方くんは?』
『まぁ、ぼちぼち。』
『どこでも狙える成績だから、選択の幅が広くて大変そうだね。』
『そうでもねぇよ。行きてぇとこは一つだけだし。』
『へぇ。そんな思い詰めたように言うなんて、よほどレベル高い大学なんだろうねぇ。』
『おそらく…。』
『あはは、なんでそんな曖昧なの。』
『いや、謎なんだよ。』
『偏差値とか?今ごろ公表してない大学なんてあるの?』
『あんだよ、たった一つだけな。』
『へぇ、それはまた難儀な。なんでそんな偏屈なトコに行きたいの?』
『んー、魅力を感じんのかな?とゆーか、もっと知りてぇっつうか。』
『なぜに疑問系?』
『まぁ、よくわかんねぇけど。』
『あはは、人一人の気持ち動かしちゃう大学なんてすごいトコだね。うんうん、それは難しい。あ、なんだかよくわかんないな。』
『は何学部行きてぇの?』
『うーん、欲を言えば薬学だけど、今のままじゃ厳しいかな。土方くんは?』
『俺は、理学が一番だな。』
『物理・化学いいもんね。』
『は全体的にいいだろうが。』
『それだから困ってるんだよ。専門知識に長けてない感じが。』
『羨ましい悩みだな。でも、それだとセンターには強いんじゃね?』
『そうでもないよ。国語は問題によってムラがあるもん。』
『あー、国語はなぁ。』
『古典は覚えればいいだけなんだけど、問題は評論なんだよねぇ。』
『感性の問題もあるからな。』
『だいたい私の考えてることと、作成者の意図が異なるのが腹立つのよね!!』
『考えすぎだろ。感情移入し過すぎなんだよ。』
『うわ、冷静な意見。』
『的確なアドバイスと言え。』
『その言い換え方が嫌だ。理系のくせにー。』
『感性の差だろ。』
『さいですか。』
『だいたいは文意を読み取るのが下手なんだよ。頭はいいくせに。』
『なんだ、それ。感性の差やらなんやら、私の育ってきた環境全否定か。』
『そーゆーわけじゃねぇよ。ただなんつうか。』
『は鈍いんでさぁ。』
ガバッ。
『わぁ!!!』
『チーッス。』
『ビックリした。鈍いって、そうでもないと思うけど。』
『自覚してないあたりが重症でさぁ。』
『でもさ、“私、鋭いのー♪”とか思ってても嫌じゃない?』
『のそうゆう殺伐としたところ、嫌いじゃねぃぜぃ。』
『私も、そこで“好き”って言わない沖田くんに好感が持てるよ。』
『ジロジロ見てんじゃねぇよ、死ね土方。』
『ジロジロ見てんのはお前の方だろォォォオオオ!!』
『そんなに羨ましいんですかぃ?に抱きつくなんて簡単なことでさぁ。隙だらけだし。』
『隙があったら、誰にでも抱きつくのか、お前は。』
『嫉妬に狂う男ほど醜いもんはありやせんぜぃ、土方さん。』
『あはは、でも沖田くんならありえそう。本能のまま生きてそうだし。』
『そいつぁ、ひでぇや。おっと、そろそろ江戸黄門再放送の時間だ。そろそろ退散するかぃ。、眼の前の男に襲われねぇよう気をつけな。』
『ふざけんなっ!!』
『ばいばい。何しに来たんだろうね?結局。』

『…お前、やっぱ鈍いわ。』
『うん、それはさっき聞いた。』
『…。わざとやってんのか?』
『何を?』
『頭いいのに、肝心なとこで思考はたらかねぇな。』
『そうみたい。なんで土方君がそんなに怒ってるか、全く分からないもん。』
『…。俺、怒ってる?』
『うん、目がさっきと違う。』
『そーゆーのは鋭いんだな。』
『ご、ごめん。』
『あ、あー、当たってわりぃ。』
『んや、私の方こそイラつかせてごめん。でもさ、お互い行きたい大学行けたらイイね。』
『なんだそりゃ。』
『私は、土方くんと同じ大学に行きたいと思ってるけど。』
『…へ?』
『だって、私の行く大学は、土方くんにとってとっても魅力的なところみたいだしね。それに、もっと知ってほしいと思ってるし。なぁんてね。』
『(や ら れ た 。)…、何大学行きてぇの?』





******あとがき******
えーっと、いろいろわかりづらいかもしれませんが…。
土方はヒロインと同じ大学に行きたくて、微妙に探りを入れているのですが、確信的な答えを得られず悶々としているわけです。
沖田は土方が毎回はぐらかされることが面白くて、これ見よがしにヒロインとの仲良し振りをアピールします。
ヒロインが、彼ら2人の心境を把握しているかどうかは謎です。天然か、計算か。それはみなさんのご想像にお任せします。