月光



★第4話 取り調べ開始



『名前は?』
『あ、です。どうぞよろしく。』
『こーゆー所で名前聞かれたら、普通フルネーム答えるだろ。』
『あぁ、それもそうですね。です。』
『…。どこの星から来た?』

わー、やっぱり地球人扱いしてくれないわけね。
ただみんなと違う服着てるってだけでさ。着物じゃないってだけじゃんよ。
てかさぁ、あなたたちも洋服でしょうが。なんで疑ってかかるかな。面倒くさい。

ん?ちょっと待てよ?
ホストの狂死郎のとき、銀さんたちスーツ着てなかった?!
なんでいきなり天人設定なの?!
そんなに地球人ッぽくない顔なのかしら?!
冒頭で顔はそんなによくないって言ったけど、この扱いひどくないか?!
かなりショックなんだけど…。

いかん、いかん。ふてくされては。
感情的になったら本当のコトも信じてもらえなくなりそうだ。
冷静になって、状況をよく見て。
私が今しなければならないことは、彼の質問に簡潔かつ的確に答えること。
少しでも”要注意”と思われたら危険だ。


『…日本語しゃべれぇわけじゃないよな?』
『しゃべれます。今まで話していたじゃないですか。』
『…お前、身分を証明するものあるか?』
『……。』


私の皮肉な発言にため息をつきながらも、土方さんは真面目に尋問をする。
怒りっぽいイメージがあったけど、意外と忍耐力があるのかもしれない。
毎回、沖田から嫌がらせを受けていればこれくらい何でもないのか。

しかし、イライラしてしまうこっちの状況もわかってほしいものだ。
だいたい、夢の世界なら私のポジション確保してから飛ばしてくれよ。
このままじゃ自分の未来がどうなるか分からない。


こっちで通用するかわかんないけど、とりあえず財布から常備している学生証と保険証を取り出した。
てか、お金以外で財布の存在をここまでありがたく思ったコトはない。


『名前はあってるな。で、東京ってどこだ?』
『…・・・。』


江戸の未来の名前でーす。

言って信じるか、信じないか。
下手に伝えて混乱させるのもなぁ。かと言って、嘘言って疑われるのもなぁ。
やっぱり役所に先に行って、どーにかこーにかしてもらえばよかった…。
身寄りのない孤児なんですーとか言って、戸籍とか作ってもらえばよかった…。


『言えねぇような所から来たのか?』
『そうゆうわけではないですけど、説明しづらいです。』
『ハァ?!T大学って言うのもわかんねぇな。こんな保険証も見たことねぇし。』
『でしょうねぇ…。』(だってこの世界のものじゃないもん。)
『ハ?!』


やば、つい言っちゃったよ。これだからダメなんだよなぁ、私。
ほら、素直って言うか、なんというか。脳と口がつながっちゃってる人なんだよね。
人がいろいろと言い訳考えてるときに、なんで質問してくるかな!!
うわぁ、疑ってる疑ってる。さっきより更に瞳孔が開いてる。取り繕わなければ。
無表情、無表情。私、何も変なこと言ってないよー。

『とりあえず、怪しいものではありません。』
『信用できるかァァァ!!!』


土方さんの怒気を含んだ叫びが、部屋中に響き渡った。



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