月光
★第6話 一本勝負
『私、大日本国という星からやって来ました。そこに東京という国があるのです。
さらにT大学という地区が私の所属する町でして、』
『G学部情報科がお前の役職かなんかか。』
『そうゆうことです。』
微妙に違うけど、ま、いっか。
『どうやって地球に?パスポートがないんじゃ不法入国だぞ。』
『それが覚えてないのです。気がついたらあなたと出合った場所に立っていました。』
きっぱりと言い切った私。だって真実なんだもの。
そんな私を呆然と眺める土方さん。
彼の右手のタバコの灰が、今にも落ちてしまいそうだ。
『お前、正気か?』
『今まで私と話していて、精神が不安定なヤツだとお思いになるふしがありましたか?』
飄々と答えてやる。こうゆう駆け引きは逃げ腰の方が分が悪い。
部屋が静寂に包まれる。
パソコン入力だったらタイピングの音が、
筆じゃなくて鉛筆やボールペンだったら一字一字書き込む音が、
この部屋を満たしてくれていただろうに。
調書を取っている彼には悪いが、この空間にまるで私と土方さんの2人しかいないような錯覚に陥った。
『私は嘘は言っていません。疑いになるのなら調べてくださって構いません。
嘘発見器につなぐなり、尋問を続けるなり、少しでも怪しいと思うのなら監視をつけるなりしてください。』
まくし立てるように、続けて発言した。
自分でも驚くくらい、上手く口が回ったと思う。
昔から屁理屈だけはよくごねてたからなぁ。
だけど私の言っていることは屁理屈でも嘘でもない。
日本の東京という都市から、銀魂の江戸という町に気がついたら来ていたのだ。
どうやってこの世界に舞い降りたのか、こっちが聞きたいくらいだ。
見つめ合うこと数分。私にはそれが永遠のように感じられた。
大の男ですら恐縮するオーラを放つ土方さん前にして、私は息が止まりそうだった。
目をそらしたら負けだ。
これはお互いの暗黙のルールだった。
勝ち負けの話じゃないことくらい分かってる。
だけど、なぜか負けたくないと思った。小心者の癖に、絶対負けてやるもんかと思った。
表情を一つも変えなかった。いや、変えることができなかったのかもしれない。
私の目は彼をずっと捉え続けたままだ。
『…いいだろう。そこまで言うなら、
、お前を信じてやる。』
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