月光



★第38話 吐露



私ね、スキな人いたの。
18歳の時、それまで男の子と遊ぶことを知らなかった私に、いろんなことを教えてくれた人。
あ、嫌らしい意味じゃなくてね?!
そんな怪訝そうな眼で見ないでよ。純粋な恋だったから。

…ホントに男慣れしてなかったんだ。
普通に話すことは出来るんだけど、休みの日に遊びに行ったりすることとかなかったし、
メールとかも事務報告とかしかしなかったし。
でもね、やっぱり憧れてはいたんだ。
なんか一緒に帰ったりとか、ずっと遅くまで残って話したりとか、下らないゲームして笑い合ったりとか。
少女マンガの読みすぎかもしれないけど。
異性の友達が欲しかったんだと思う。


その人はね、私の青春を全部実現してくれた人だったの。
毎日他愛もないメールを夜眠るまでしたり、
家までママチャリで迎えに来てくれて、2ケツしてそのまま遠くまで出かけていったり、
星とか月とか見える時間帯に公園のベンチに座ってまったり話したり、
2人で映画観に行ってポップコーン食べながら肩にもたれ合ったりとかして。
あのときはすごく緊張したな。
付き合ってもないのに、いいのかな?なんて心配しながら、何だかんだで嬉しかった。

本当に、本当に幸せで充実してた。

ある日ね、『俺、さんのこと…』ってだけのメールが届いたの。
何のことだかさっぱりわからなくて、『何でこんなに中途半端なメールなの?』って返したら『スクロールした笑?』って。
意味が分からなくて、でも言われた通りにメールの本文をスクロールしていったら、
『好き。これからもよろしく!』
って書いてあったの。


彼と遊び始めてからたったの2週間だったんだけど、
今まで異性に対しても恋愛に対しても免疫がない分、私あっさりスキになっちゃってね。
あ、彼は同じ学校で勉強してた人で、元から面識はあったのよ?
メールでの出会いとかそんなんじゃないからね。
そんなことがあったもんだから、このままずっとこんな風に、彼と笑って過ごせるんだろうなって勝手ながらに思ってた。


そしたらね、彼に彼女が出来たの。
もちろん私じゃない子。
同じクラスで英語がすごく得意で、モデルさんみたいに背が高い子でね。

あー、やっぱりあぁゆう可愛い子じゃないとダメなんだ。
私みたいなどこを取っても普通以下の子って、
どんなに好意あるようなことされても勘違いしちゃダメなんだって、期待するだけ無駄なんだって思った。

諦めと同時に、心の奥底で両思いだって舞い上がってた自分がすごく恥ずかしくて、泣けてきてね。
それからは周りのみんながどんなに『うまく行くよ!』とか、『絶対のことスキだって〜。』とか言われても、
その相手から『好き』って言葉を、その真意をきちんと確かめない限りは信じることが出来なくなっちゃったの。

…だって傷つくのは私だから。


馬鹿みたいでしょ。
でもね、自分に自信がないとこうゆう思考になっちゃうみたい。
男の人が私のことを好きになってくれるって、どうしても思えない。
遊ばれてるとか、反応見て楽しんでるんじゃないかとか、いちいちドキドキするのが面倒で。
何も意識しなければこんなじれったい感情になることはない。


…だから私、男の人を好きになるのすらも怖いの。




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